その男を、そんな仕事に不断に働かせるのを、痛々しく思った。
「それにお前さんは人品がいいから、身が持てないんだよ」
お島は話ぶりなどに愛嬌《あいきょう》のあるその男の傍にすわっていると、自然《ひとりで》に顔を赧《あか》くしたりした。黒子《ほくろ》のような、青い小《ちいさ》い入墨が、それを入れたとき握合った女とのなかについて、お島に異様な憧憬《しょうけい》をそそった。
「いくつの時分さ」
お島はその手の入墨を発見したとき、耳の附根まで紅くして、猥《みだら》な目を※[#「※」は「目+爭」、第3水準1−88−85、204−3]《みは》った。男はえへらえへらと、締《しまり》のない口元に笑った。
「あっしが十六ぐらいのときでしたろう」
「その女はどうしたの」
「どうしたか。多分大阪あたりにいるでしょう。そんな古い口は、もう疾《とっく》のむかしに忘れっちゃったんで……」
暮に彼の手によって、濁ったところへ沈められた若い女のことが、まだ頭脳《あたま》に残っていた。
「そんな薄情な男は、私は嫌《きら》いさ」
お島はそう言って笑ったが、男がその時々に、さばさばしたような気持で、棄てて来た多くの女
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