い狂暴の血が焦《や》けただれたように渦をまいていた。
締切ったその二階の小室《こま》には、かっかと燃え照っている強い瓦斯《ガス》の下に、酒の匂《にお》いなどが漂って、耳に伝わる甘い私語《ささやき》の声が、燃えつくような彼女の頭脳《あたま》を、劇しく刺戟《しげき》した。白い女のゴム櫛《ぐし》などが、彼女の血走った目に異常な衝動を与えた。
手に傷などを負って、二人がそこを出たときには、春雨のような雨が、ぼつぼつ顔にかかって来た。
まだ人通りのぼつぼつある、静かな春の宵に、女は店頭《みせさき》へ来て、飾窓の硝子《ガラス》に小石を撒《ま》きちらしたり、ヒステリックな蒼白い笑顔を、ふいにドアのなかへ現わしたりした。
「お上さんはいるの」
女は臆病らしく奥口を覗《のぞ》いたりした。
「旦那をちょっと此処《ここ》へ呼んで下さいな」
女はそう言って、しつこく小僧に頼んだ。
小僧は面白そうに、にやにや笑っていた。
「旦那は今いないんだがね、お前さんも亭主があるんだから、早く帰って休んだら可《い》いだろう」
お島は側へ来て、やさしく声かけた。そして幾許《いくら》かの金を、小い彼女の掌に載せて
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