の方へ訪ねて行くことを、お島もうすうす感づいていた。
「あの女はどうしました」
お島は思出したように、それを小野田に訊ねたが、その頃は食物屋《たべものや》などに奉公していた当座で、いくらか身綺麗にしていた女は、亭主持になってからすっかり身装《みなり》などを崩しているのであった。
「いくら向うに未練があったって、あの頃とは違いますよ。亭主のあるものに手を出して、呶鳴込《どなりこ》まれたらどうするんです」
小野田がまだ全く忘れることのできないその女のことを口にすると、お島はそう言って窘《たしな》めたが、別れてからも、小野田に執着を持っている女を不思議に思った。
「あいつの亭主は、そんな事を怒るような男じゃない、おれがあいつの世話をしていたことも、ちゃんと知っていて、今でもそういうことには無神経でいるんだ」
小野田はそう言って笑っていた。
二三日前から、また時々自転車で乗出すことにしていたお島が、ある晩九時頃に家へ帰って来ると、女から、呼出をかけられて、小野田は家にいなかった。
「どこへ行ったえ」
お島は何のことにも能《よ》く気のつく順吉に、私《そっ》とたずねた。
「白山《はくさん
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