、古いお召の被布姿《ひふすがた》で来ていたが、お島の権幕に怯《お》じおそれたように、悄々《すごすご》出ていった。
「この莫迦!」
 二階へ駈《かけ》あがって往ったお島は、いきなり小野田に浴せかけた。毎日|鬢《びん》や前髪を大きくふっくらと取った丸髷《まるまげ》姿で出ていた彼女は、大きな紋のついた羽織もぬがずに、外眦《めじり》をきりきりさせてそこに突立っていた。
「髯《ひげ》なんかはやして、あんなものにでれでれしているなんて、お前さんも余程《よっぽど》な薄野呂《うすのろ》だね」
 お島はそう言いながら、そこにあった花屑《はなくず》を取あげて、のそりとしている小野田の顔へ叩《たた》きつけた。吊《つり》あがったような充血した目に、涙がにじみ出ていた。
「何をする」
 小野田も怒りだして、そこにあった水差を取ってお島に投げつけた。彼女の御召の小袖から、水がだらだらと垂れた。
 負けぬ気になって、お島も床の間に活かったばかりの花を顛覆《ひっくらか》えして、へし折りへし折りして小野田に投《ほう》りつけた。
 劇《はげ》しい格闘が、直《じき》に二人のあいだに初まった。小野田が力づよい手を弛《ゆる》め
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