の間、小野田が、多く外まわりに自転車で乗出した。
顧客《とくい》先で、小野田が知合になった生花《はな》の先生が出入《ではい》りしたり、蓄音器を買込んだりするほど、その頃景気づいて来ていた店の経済が、暗いお島などの頭脳《あたま》では、ちょと考えられないほど、貸や借の紛紜《こぐらかり》が複雑になっていたが、それはそれとして、身装《みなり》などのめっきり華美《はで》になった彼女は、その日その日の明い気持で、生活の新しい幸福を予期しながら、病院の門を潜《くぐ》った。
百六
小野田は時々外廻りに歩いて、あとは大抵店で裁《たち》をやっていたが、隙《すき》がありさえすれば蓄音器を弄《いじ》っていた。楽遊《らくゆう》や奈良丸《ならまる》の浪華節《なにわぶし》に聴惚《ききほ》れているかと思うと、いつかうとうと眠っているようなことが多かった。
しげしげ足を運んでくる生花《はな》の先生は、小野田が段々好いお顧客《とくい》へ出入《ではい》りするようになったお島に習わせるつもりで、頼んだのであったが、一度も花活《はないけ》の前に坐ったことのない彼女の代りに、自身二階で時々無器用な手容《てつき
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