れた、二つ折小形のその広告札を、羅紗《らしゃ》の袋に入れて、お島は朝早く新入生などの多く出入《ではいり》する学校の門の入口に立った。
「どうぞどっさりお持くださいまし。そして皆さん方へも、お拡めなすって下さいまし」お島はそう云って、それを彼等の手に渡した。
「私《わたくし》どもでは皆さんの御便宜を図って、羅紗屋と特約を結んで、精々勉強いたしますから、どうぞ御贔屓に……スタイルも極《ごく》斬新《ざんしん》でございます」彼女はそうも云って、面白そうに集ってくる若い人達の心を惹着《ひきつ》けた。
「安いね」
「洋行がえりの洋服屋だとさ」
学生たちは口々に私語《ささや》きあった。
「おいおい、引札を撒《ま》くことは止めてもらおう。此方《こちら》ではそれぞれ規定の洋服屋があるから」
門番や小使たちは、学生の手から校庭へ撒棄てられる引札を煩《うるさ》がって、彼女を逐攘《おいはら》おうとした。
お島は時とすると、札《さつ》を二三枚ポケットから取出して、彼等の手に渡した。そして学校の事務員にまで取入ることを怠らなかった。
「品物を好くして、安く勉強すると云うなら、どこで拵えるのも同じだから、学生
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