かったことなどが、一層彼女の頭脳《あたま》をむしゃくしゃさせていた。小野田がその父親を呼寄せさえしなければ、あの家もどうか恁《こう》か持続けて行けたように考えられた。あの飲んだくれのために、どのくらい自分の頭脳が掻廻《かきまわ》され、働きが鈍らされたか知れないと思った。
「撲《ぶち》のめしても飽足りない奴だ」
 お島は、酔ったまぎれに自分を離縁しろといって、小野田を手甲擦《てこず》らせていたと云う父親の言分から、内輪が大揉《おおも》めにもめて、到頭田舎へ帰って行くことになった父親に対する憎悪が、また胸に燃えたって来るのを覚えた。小野田の寝顔までが腹立しく見返えられた。
「せっせと仕事をして下さいよ。莫迦みたいな顔して寝ていちゃ困りますよ」
 小野田が薄目をあいて、ちろりと彼女の顔を見たとき、お島はいらいらした声で言った。
 お島は台所で飯を食べている時分に、やっと小野田はのそのそ起出して来た。
「仕事々々って、そうがみがみ言ったって仕事ができるもんじゃないよ」
 小野田は火鉢の傍へ来て、莨《たばこ》をふかしはじめながら、まだ眠足《ねむりた》りないような赭《あか》い目をお島の方へ向けた。
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