そ》るか、お上さんはここで最後の運を試すんだよ」
 萌黄《もえぎ》の風呂敷に裹《つつ》んだその蒲団を脊負いださせるとき、お島は気嵩《きがさ》な調子で、その時までついて来た順吉を励《はげま》した。
「お前もその意《つもり》でやっておくれ。この恩はお上さん一生忘れないよ」
 涙含《なみだぐ》んだような顔をして、それを脊負って行く順吉のいじらしい後姿を見送っているお島の目には、涙が入染《にじ》んで来た。
「どうでしょう。職人は小《ちいさ》い時分から手なずけなくちゃ駄目だね。順吉だけは、どうか渡職人《わたりじょくにん》の風《ふう》に染《し》ましたくないもんだ。それだけでも私たちは茫然《ぼんやり》しちゃいられない」
 お島は大工の仕事を見ている、小野田の傍へ来て呟《つぶや》いた。
 表では大工が、二人ばかりの下を使って、せっせっと木拵《きごしら》えに働いていた。

     百

 あらかた出来あがったところで、大工の手を離れた店の飾窓や、入口の戸《ドア》に張るべき硝子《ガラス》を、お島が小野田に言われて、根津に家を持ったときから顔を知られている或硝子屋へ懸けあいに行ったのは、それから間もなくで
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