よ》かったね」
お島は可怕《こわ》そうに言ったが、やっぱりこの男を肺病患者扱いにする気には成得《なりえ》なかった。
「あんたが肺病になれば、私が看病しますよ。肺病なんか可怕《おっかな》くて、どうするもんですか」
「今じゃそうも行かない。これでも山じゃ死《しの》うとしたことさえあったっけがね」
「おお厭だ」お島は思出してもぞっとするような声を出した。「そんな古いことは言《いい》っこなし。あなたは余程《よっぽど》人が悪くなったよ」
九十五
一日の雑沓《ざっとう》と暑熱に疲れきったような池の畔《はた》では、建聯《たてつらな》った売店がどこも彼処《かしこ》も店を仕舞いかけているところであったが、それでもまだ人足《ひとあし》は絶えなかった。水に臨んだ飲食店では、人が蓄音器に集っていたり、係のものらしい男が、粗野な調子で女達を相手に酒を飲んでいたりした。暗闇の世界に、秘密の歓楽を捜しあるいているような、猥《みだ》らな女と男の姿や笑声が聞えたりした。
お島はその間を、ふらふらと寂しい夢でも見ているような心持で歩いていた。会場のイルミネーションはすっかり消えてしまって、無気味な広告
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