ように、紛らされていた利己的な思念が、心の底からむくれ出して来るように感じて、我儘な涙が湧立って来た。
お島がじっと寝てもいられないような気がして、下へ降りて行ったとき、父親はもう酒をはじめていた。小野田も興がなさそうに傍に坐っていた。
「どうもすみません」
お島は何もない餉台《ちゃぶだい》の前に坐っている父親の傍へ来て、やっぱり顔を顰めていた。
「私はこの病気が起ると、もうどうすることも出来ないんです。それに家も、これから夏は閑《ひま》ですから、お※[#「※」は「疑」の左側+欠」、第3水準1−86−31、173−15]待《もてな》しをしようと思っても、そうそうは為《し》きれないんです」
「そうともそうとも、それどこじゃない。私《わし》は一時のお客に来たものでないから」
父親はいつまでも倅夫婦の傍で暮そうとしている自分の心持を、その時も口から洩《もら》したが、お島が積《つも》って燗《つ》ける酒に満足していられないような、強い渇望がその本来の飲慾を煽《あお》って来ると、父親はふらふらと外へ出て、この頃|昵《なじ》みになった近所の居酒屋へ入っていくのが、習慣になった。そして家でおとな
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