あった博覧会の賑《にぎわ》いで、土地が大した盛場になっていた為であった。
その家は、不断は眠っているような静かな根津の通りであったが、今は毎日会場からの楽隊の響が聞えたり、地方から来る色々な団体見物の宿泊所が出来たりして、近い会場の浮立った動揺《どよめき》が、ここへも遽《あわただ》しい賑かしさを漂わしていた。
陽気がややぽかついて来たところで、小野田が出した懇《ねんご》ろな手紙に誘《いざな》われて、田舎で毎日野良仕事に憊《くたび》れている彼の父親が、見物にやって来たり、お島から書送った同じ誘引状に接して、彼女が山で懇意になった人々が、どやどや入込んで来たりした。世のなかが景気づいて来たにつれて、お島たちは自分たちの浮揚るのは、何の造作もなさそうに思えていた。
この店を張るについての、二人の苦しい遣繰《やりくり》を少しも知らない父親は、来るとすぐ倅《せがれ》夫婦につれられて、会場を見せられて感激したが、これまで何一つ面白いものを見たこともない哀れな老人《としより》を、そうした盛り場に連出して悦ばせることが、お島に取っては、自分の感激に媚《こ》びるような満足であった。
上野は青葉が
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