れる恋愛談などから、自分もやっぱり同じ女であることの暗示を得るような、秘密な渇望と幻想とに、思い浸ることがあったが、動《と》もすると自分の目覚しい活動そのものすら、それらのぼんやりした影のような目的を追い求めているためですらないように思われたりした。
「お前さんは真実《ほんとう》に好かんよ」
肉体の苦痛を堪《た》え忍ばされたあとでは、そうした男に対する反撥心《はんぱつしん》が、彼女の体中に湧《わき》かえって来た。
根津へ引越して来てからも、小野田に妾を周旋するということを言出してから、急に嫌《きら》いになった印判屋の上さんのところへ、お島はその時の自分の感情は、すっかり忘れてしまったもののように、ふと自分の苦痛を訴えに行くことすらあった。
「ほんとうに、あの人に妾を周旋してやって下さい。そうでもしなければ、私はとても自由な働きができません」
お島はそう言って、熱心に頼んだ。
「笑談《じょうだん》でしょう。そんな事をしたら、それこそ大変でしょう」
上さんはお島の言うことが、総《すべ》て虚構であるとしか思えなかった。
九十二
そこへ引越して行ったのは、その頃開かれて
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