な」
小野田は心から厭そうにお島にそれを言出されると、苦笑しながら慍然《むっ》として言った。
「間男の子でも何でも、あんな御父さんなんかに肖《に》ない方が可《い》いんですよ」
「ひどいことを言うなよ。あれでも己を産んでくれた親だ」
小野田は終《しまい》に怒りだした。
「お前さんはそれでも感心だよ。あんな親でも大事にする気があるから。私なら親とも思やしない」
八十七
そんな気持の嵩《こう》じて来たお島には、自分一人がどんなに焦燥《やきもき》しても、出世する運が全く小野田にはないようにさえ考えられてきた。彼の顔が無下《むげ》に卑しく貧相に見えだして来た。ビーヤホールの女などと、面白そうにふざけていることの出来る男の品性が、陋《さも》しく浅猿《あさま》しいもののように思えた。
「己はまた親の悪口《あっこう》なぞ云う女は大嫌いだ」
顔色を変えて、お島の側を離れると、小野田は黙って仕事に取りかかろうとして、電気を引張って行ってミシンを踏みはじめた。
そのミシンは、支払うべき金がなかったために、お島が機転を利《き》かして、機械の工合がわるいと言って、新しく取替えたばかりの代
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