は、お島の帰りでもおそいと、時々近所のビーヤホールなどへ入って、蓄音機を聴きながら、そこの女たちを相手に酒を飲んでいては、お島に喰ってかかられたりしたが、やっぱり自分の立てた成算を打壊《ぶちこわ》されながら、その時々の気分を欺かれて行くようなことが多かった。
「あの御父《おとっ》さんの産んだ子だと思うと、厭になってしまう。東京へでも出ていなかったら、貴方《あんた》もやっぱりあんなでしょうか」
 お島はにやにやしている小野田の顔を眺めながら笑った。
「莫迦《ばか》言え」小野田はその頃延しはじめた濃い髭《ひげ》を引張っていた。
「だからビーヤホールの女なぞにふざけていないで、少しきちんとして立派にして下さいよ。あんなものを相手にする人、私は大嫌い、人品《じんぴん》が下りますよ」
 お島はどうかすると、父親の面差《おもざし》の、どこかに想像できるような小野田の或卑しげな表情を、強《し》いて排退《はねの》けるようにして言った。小野田が物を食べる時の様子や、笑うときの顔容《かおつき》などが、殊《こと》にそうであった。
「子が親に似るのに不思議はないじゃないか。己は間男《まおとこ》の子じゃないから
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