が、明朝《あした》届いたとき、二人は漸《やっ》と仕事に就くことができた。
八十六
住居の手狭なここへ引移ってから、初めて世帯《しょたい》を持った新夫婦か何ぞのように、二人は夕方になると、忙しいなかをよく外を出歩いた。
川西を出たときから、新しい愛執が盛返されて来たようなお島たちはそれでもその月は可也にあった収入で、涼気《すずけ》の立ちはじめた時候に相応した新調の着物を着たり着せたりして、打連れて陽気な人寄場《ひとよせば》などへ入って行った。
行く先々で、その時はまるで荷厄介のように思って、惜げもなく知った人にくれたり、棄値《すてね》で売ったり又は著崩《きくず》したりして、何一つ身につくもののなかったお島は、少しばかり纏《まと》まった収入の当がつくと、それを見越して、月島にいる頃から知っていた呉服屋で、小野田が目をまわすような派手なものを取って来て、それを自分に仕立てて、男をも着飾らせ、自分にも着けたりした。
「己たちはまだ着物なんてとこへは、手がとどきやしないよ。成算なしに着物を作って、困るのは知れきっているじゃないか」
着ものなどに頓着《とんじゃく》しない小野田
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