つけるように言って、筋張った彼の手をきびしく払退《はらいの》けた。
劇《はげ》しい争闘がしばらく続いた。
婉曲《えんきょく》としおらしさとを欠いた女の態度に、男の顔を潰《つぶ》されたと云って、川西がぷりぷりして二階へあがって行ってから、お島は腕節《うでぶし》の痛みをおさえながら、勝矜《かちほこ》ったものの荒い不安を感じた。
暫《しばら》くすると、白粉をこてこて塗って、湯から帰って来たお秀が、腕を組んで、ぼんやり店頭《みせさき》に彳《たたず》んでいるお島に笑顔を見せて、奥へ通って行った。
「ぽんつくだな」お島はそう思いながら、女の顔を見返しもせずに黙っていた。何のことをも感づくことができずに、全く満足し切っているように鈍い、その癖どこかおどおどしている女の様子に、妄《むやみ》に気がいらいらして、顔の筋肉一つすら素直に働かないのであった。
「小野田が帰ったら、今の始末を残らず吩咐《いいつ》けよう。そして今からでも二人でここを出てやろう」
お島はそう思いながら、そこに立ったまま彼の帰りを待っていた。外は秋らしい冷《ひやや》かな風が吹いて、往来を通る人の姿や、店屋々々の明《あかり》が、
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