などの始末の遣《やり》っぱなしになっている其処へは行きたくなかった。上海行を吹聴したような人の方へは、どこへも姿を見せたくなかった。

     八十一

 不安な一夜を、芝口の或|安旅籠《やすはたご》に過して、翌日二人は川西へ身を寄せることになるまで、お島たちは口を捜すのに、暑い東京の町を一日|彷徨《ぶらつ》いていた。
 最後に本郷の方を一二軒|猟《あさ》って、そこでも全く失望した二人が、疲れた足を休めるために、木蔭に飢えかつえた哀れな放浪者のように、湯島《ゆしま》天神の境内へ慕い寄って来たのは、もうその日の暮方であった。
 漸《ようよ》う日のかげりかけた境内の薄闇には、白い人の姿が、ベンチや柵《さく》のほとりに多く集っていた。葉の黄ばみかかった桜や銀杏《いちょう》の梢《こずえ》ごしに見える、蒼い空を秋らしい雲の影が動いて、目の下には薄闇《うすぐら》い町々の建物が、長い一夏の暑熱に倦み疲れたように横《よこた》わっていた。二人は仄暗《ほのぐら》い木蔭のベンチを見つけて、そこに暫く腰かけていた。涼しい風が、日に焦《や》け疲れた二人の顔に心持よく戦《そよ》いだ。
 水のような蒼い夜の色が、
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