気もなげにくれてもらったりしていた妹は、帯や下駄や時々の小遣いの貸借《かしかり》にも、彼女を警戒しなければならないことに気がついた。
「そんなに吝々《けちけち》しなさんなよ、今に儲けてどっさりお返ししますよ」
 それを断られたとき、お島はそう云って笑ったが、土地の人たちの腹の見えすいているようなのが腹立しかった。自分の腕と心持とが、全く誤解されているのも業腹《ごうはら》であった。
 小野田にも信用がなく、自分にも働き勝手の違ったような、その土地で、二人は日に日に上海行の計画を鈍らされて行った。二人は小野田が数日のあいだに働いて手にすることのできた、少しばかりの旅費を持って、辛々《からがら》そこを立ったのであった。
 一日込合う暑い客車の瘟気《うんき》に倦《う》みつかれた二人が、停車場の静かな広場へ吐出されたのは、夜ももう大分遅かった。
「どこへ行ったものだろうね」
 青い火や赤い火の流れている広告塔の前に立って、しっとりした夜の空気に蘇《よみが》えったとき、お島はそこに跪坐《しゃが》んでいる小野田を促した。
 前《せん》に働いていた川西という工場のことを、小野田は心に描いていたが、前借
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