込んで来てくれたのであった。
 秘密な喜悦《よろこび》が、恐怖に襲われているお島たちの暗い心のうえに拡がって来た。
「何だか気味がわるいようだね」
 爺さんの行ったあとで、お島はその金を神棚《かみだな》へあげて拝みながら、小野田に私語《ささや》いた。

     七十五

 燈明の赤々と照している下で、お島たちはまるで今までの争いを忘れてしまったように、興奮した目を輝かして坐っていた。何か不思議な運命が、自分の身のうえにあるように、お島は考えていた。暗い頭脳《あたま》の底から、光が差してくるような気がした。
「ふむ、こう云うこともあるんだね」お島は感激したような声を出した。
「全く木村さんのいうことは当ったよ。して見ると、私は何でもヤマを張って成功する人間かも知れないね」
「お上さんの気前じゃ、地道《じみち》なことはとても駄目かも知れませんよ」
「面倒《めんど》くさい洋服屋なんか罷《や》めて、株でも買った方がいいかも知れないね」
「そうですね。洋服屋なんてものは、とても見込はありませんね。私《あっし》は二日歩いてみて、つくづくこの商売が厭になってしまった」
 職人は首を項垂《うなだ》れ
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