《ひっそり》していたが、その癖寒い冬の夕暮のあわただしい物音が、荒《さび》れた町の底に淀《おど》んでいた。燻《くす》みきった男女の顔が、そこここの薄暗い店屋に見られた。活気のない顔をして職工がぞろぞろ通ったり、自転車のベルが、海辺の湿っぽい空気を透して、気疎《けうと》く耳に響いたりした。目に見えないような大道《だいどう》の白い砂が、お島の涙にぬれた目や頬に、どうかすると痛いほど吹つけた。
 お島は死場所でも捜しあるいている宿なし女のように、橋の袂《たもと》をぶらぶらしていたが、時々|欄干《らんかん》にもたれて、争闘に憊《つか》れた体に気息《いき》をいれながら、ぼんやり彳《たたず》んでいた。寒い汐風《しおかぜ》が、蒼い皮膚を刺すように沁透《しみとお》った。
 やがて仄暗《ほのぐら》い夜の色が、縹渺《ひょうびょう》とした水のうえに這《はい》ひろがって来た。そしてそこを離れる頃には、気分の落著《おちつ》いて来たお島は、腰の方にまた劇《はげ》しい疼痛《とうつう》を感じた。
 暗くなった町を通って、家へ入って行った時、店の入口で見慣れぬ老爺《じじい》の姿が、お島の目についた。
 お島は一言二言口
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