どこか体を悪くしているね。今までこんな事はなかったんだもの。私の体が人と異《ちが》っているのかしら、誰でも恁《こ》うかしら」お島は小野田に体に触らせながら、この頃になって萌《きざ》しはじめて来た、自分か小野田かに生理的の欠陥があるのではないかとの疑いを、その時も小野田に訴えた。
お島は小野田に済まないような気のすることもあったが、この結婚がこんな苦しみを自分の肉体に齎《もたら》そうとは想いもかけなかった。
お島は今着ているものの聯想《れんそう》から鶴さんの肉体のことを言出しなどして、小野田を気拙《きまず》がらせていた。男の体に反抗する女の手が、小野田の火照《ほて》った頬《ほお》に落ちた。
兇暴なお島は、夢中で水道の護謨栓《ゴムせん》を向けて、男の復讎《ふくしゅう》を防ごうとした。
七十四
小野田の怯《ひる》んだところを見て、外へ飛出したお島は、何処《どこ》へ往くという目当もなしに、幾箇《いくつ》もの町を突切って、不思議に勢いづいた機械のような足で、ぶらぶら海岸の方へと歩いて行った。
町幅のだだっ広い、単調で粗雑《がさつ》な長い大通りは、どこを見向いても陰鬱に闃寂
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