われた。
七十三
二日ばかり捜しあるいた口が、どこにも見つからなかったのに落胆《がっかり》した彼が、日の暮方に疲れて渡場《わたしば》の方から帰って来たとき、家のなかは其処《そこ》らじゅう水だらけになっていた。
以前友達の物を持逃したりなどしたために、警察へ突出そうとまで憤っている男もあって、急にぐれてしまった自分の悪い噂《うわさ》が、そっちにも此方《こっち》にも拡がっていることを感づいたほか、何の獲物もなかった彼は、当分またお島のところに置いてもらうつもりで、寒い渡しを渡《わた》って、町へ入って来たのであったが、お島の影はどこにも見えずに、主人の小野田が雑巾《ぞうきん》を持って、水浸しになった茶の間の畳をせっせと拭《ふ》いていた。
気の小さい割には、躯《からだ》の厳丈づくりで、厚手に出来た唇《くちびる》や鼻の大きい銅色《あかがねいろ》の皮膚をした彼は、惘《あき》れたような顔をして、障子も襖《ふすま》もびしょびしょした茶《ちゃ》の室《ま》の入口に突立っていた。
「どうしたんです、私《あっし》の留守のまに小火《ぼや》でも出たんですか」
「何《なあ》に、彼奴《あいつ》の悪
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