です」
「そんな人とどうして一緒になったね」女はねちねちした調子で言った。
 お島は「ふむ」と笑って、泣顔を背向《そむ》けたが、この女には、自分の気分がわかりそうにも思えなかった。
「でも東京というところは、気楽な処じゃないかね。私等《わしら》姑《しゅうと》さんと気が合わなんだで、恁《こう》して別れて東京へ出て来たけれど、随分辛い辛抱もして来ましたよ。今じゃ独身《ひとり》の方が気楽で大変好いわね。御亭主なんぞ一生持つまいと思っているわね」
「何を言っているんだ」と云うような顔をして、お島は碌々《ろくろく》それには耳も仮さなかった。そしてやっぱり自分一人のことに思い耽《ふけ》っていた。時々胸からせぐりあげて来る涙を、強いて圧《おし》つけようとしたが、どん底から衝動《こみあ》げて来るような悲痛な念《おもい》が、留《とめ》どもなく波だって来て為方がなかった。どこへ廻っても、誤り虐《しいた》げられて来たような自分が、可憐《いじらし》くて情《なさけ》なかった。
 小野田がのそりと入って来たときも、静に針を動かしている女の傍に、お島は坐っていた。どんよりした目には、こびり着いたような涙がまだたまっ
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