店を持ったり何かしたのが、私の見込ちがいだったのです」
 お島は口惜《くや》しそうにぼろぼろ涙を流しながら言った。
「どうしても私は別れます。あの男と一緒にいたのでは、私の女が立ちません」
 荒い歔欷《すすりなき》が、いつまで経っても遏《や》まなかった。

     七十

「どうなすったね」
 脇目もふらずに、一日仕事にばかり坐っている沈みがちなその女は、惘《あき》れたような顔をして、お島が少し落着きかけて来たとき、言出した。
「貴女《あんた》はよく稼ぐというじゃないかね。どうしてそう困るね」
「私がいくら稼いだって駄目です。私はこれまで惰《なま》けるなどと云われたことのない女です」お島は涙を拭《ふ》きながら言った。
「洋服屋というものは、大変|儲《もう》かる商売だということだけれど……二人で稼いだら楽にやって行けそうなものじゃないかね」女はやっぱり仕事から全く心を離さずに笑っていた。
「それが駄目なんです。あの男に悪い病気があるんです。私は行《や》ろうと思ったら、どんな事があっても遣通《やりとお》そうって云う気象ですから、のろのろしている名古屋ものなぞと、気のあう筈《はず》がないん
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