て抑えるようにして笑いかけた。
「何《なあ》に、そうでもないよ」
 小野田は顔を顰《しか》めながら、仕事道具の饅頭《まんじゅう》を枕に寝そべって、気の長そうな応答《うけごたえ》をしていた。
 お島はのろくさいその居眠姿が癪《しゃく》にさわって来ると、そこにあった大きな型定規のような木片《きぎれ》を取って、縮毛《ちぢれげ》のいじいじした小野田の頭顱《あたま》へ投《なげ》つけないではいられなかった。
「こののろま野郎!」
 お島は血走ったような目一杯に、涙をためて、肉厚な自分の頬桁《ほおげた》を、厚い平手で打返さないではおかない小野田に喰《く》ってかかった。猛烈な立ちまわりが、二人のあいだに始まった。
 殺しても飽足りないような、暴悪な憎悪の念が、家を飛出して行く彼女の頭に湧返《わきかえ》っていた。
 暫くすると、例の女が間借をしている二階へ、お島は真蒼《まっさお》になって上って行った。
「あの男と一緒になったのが、私の間違いです。私の見損《みそこな》いです」お島は泣きながら話した。
「どうかして一人前《いちにんまえ》の人間にしてやろうと思って、方々|駈《かけ》ずりまわって、金をこしらえて
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