も三月も続いた。家賃が滞ったり、順繰に時々で借りた小《ちいさ》い借金が殖《ふ》えて行ったりした。
「これじゃ全然《まるで》私達が職人のために働いてやっているようなものです」お島は遣切《やりきり》のつかなくなって来た生活の圧迫を感じて来ると、そう言って小野田を責めた。冬中|忙《せわ》しかった裁板の上が、綺麗に掃除をされて、職人の手を減した店のなかが、どうかすると吹払ったように寂しかった。
近頃電話を借りに行くこともなくなった大家の店には、酒の空瓶《あきびん》にもう八重桜が生《い》かっているような時候であった。そこの帳場に坐っている主人から、お島たちは、二度も三度も立退《たちのき》の請求を受けた。
「洋服屋って、皆《みん》なこんなものなの。私は大変な見込ちがいをして了った」
終《しまい》に工賃の滞っているために、身動きもできなくなって来た職人と、店頭《みせさき》へ将棋盤などを持出していた小野田の、それにも気乗がしなくなって来ると、ぽかんとして女の話などをしている暢気《のんき》そうな顔が、間がぬけたように見えたりして、一人で考え込んでいたお島はその傍へ行って、やきもきする自分を強《し》い
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