も、二三|月《かげつ》の東京見物や、月々の生活費に使ってしまってから、手が利くところから仕立物などをして、小遣を稼《かせ》いでいた。二三度逢ううち直にお島はこの女を古い友達のようにして了った。
「まあ宅《うち》へ来て年越でもなさいよ」お島は女に言った。
女は惘《あき》れたような顔をして、火鉢の傍で小野田と差向いに坐っていたが、間もなく黙って帰って行った。
「いくらお辞儀が嫌いだって、あんなこと言っちゃ可《い》けねえ」後で小野田がはらはらしたように言出した。
「ああでも言って逐攘《おっぱら》わなくちゃ、遣切《やりき》れやしないじゃないか」お島は顫《ふる》えるような声で言った。
「不人情で言うんじゃないんだよ。今に恩返しをする時もあるだろうと思うからさ」
六十九
同じような仕事の続いて出ていた三月《みつき》ばかりは、それでもまだどうか恁《こう》かやって行けたが、月が四月へ入って、ミシンの音が途絶えがちになってしまってからは、お島が取かかった自分の仕事の興味が、段々裏切られて来た。職人の手間を差引くと、幾許《いくら》も残らないような苦しい三十日《みそか》が、二月《ふたつき》
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