そくまで廻っているミシンの響や、アイロンの音が、自分の腕一つで動いていると思うと、お島は限りない歓喜と矜《ほこり》とを感じずにはいられなかった。
 劇《はげ》しい仕事のなかに、朝から薄ら眠いような顔をしている乱次《だらし》のない小野田の姿が、時々お島の目についた。
「ちッ、厭になっちまうね」
 お島は針の手を休めて、裁板の前にうとうとと居睡《いねむり》をはじめている、彼の顔を眺めて呟《つぶや》いた。
「どうしてでしょう。こんな病気があるんだろうか」
 職人がくすくす笑出した。
「そんなこって善く年季が勤まったと思うね」
「莫迦《ばか》いえ」小野田は性《しょう》がついて来ると、また手を働かしはじめた。
 色々なものの支払いのたまっている、大晦日が直《じき》に来た。品物でかりた知合の借金に店賃《たなちん》、ミシンの月賦や質の利子もあった。払いのこしてあった大工の賃銀のことも考えなければならなかった。
「こんなことじゃとても追着《おっつ》きこはありゃしない」お島は暮に受取るべき賃銀を、胸算用で見積ってみたとき、そう言って火鉢の前に腕をくんで考えこんだ。
「もっともっと稼がなくちゃ」お島はそう
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