女を物にしてみようと云う彼の企てが、巧く壺《つぼ》にはまって来たようなものであった。
「遣ってやれんこともないね」感じが鈍いのか、腹が太いのか解らないような小野田は、にやにやしながら呟《つぶや》いた。名古屋の方で、二十歳頃《はたちごろ》まで年季を入れていたこの男は、もう三十に近い年輩であった。上向《うわむき》になった大きな鼻頭《はながしら》と、出張った頬骨《ほおぼね》とが、彼の顔に滑稽《こっけい》の相を与えていたが、脊《せ》が高いのと髪の毛が美しいのとで、洋服を着たときの彼ののっしりした厳《いかつ》い姿が、どうかするとお島に頼もしいような心を抱かしめた。
「私のこれまで出逢ったどの男よりも、お前さんは男振が悪いよ」お島はのっそりした無口の彼を前において、時々遠慮のない口を利いた。
「むむ」小野田はただ笑っているきりであった。
「だけどお前さんは洋服屋さんのようじゃない。よくそんな風をしたお役人があるじゃないか」
 しなくなした前垂《まえだれ》がけの鶴さんや、蝋細工《ろうざいく》のように唯美しいだけの浜屋の若主人に物足りなかったお島の心が、小野田のそうした風采《ふうさい》に段々|惹着《ひ
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