が、東京が近《ちかづ》くにつれて、汽車の駐《とど》まる駅々に、お島は自分の生命《いのち》を縮められるような苦しさを感じた。
「このまま自分の生家《うち》へも、姉の家へも寄りついて行きたくはない」お島は独りでそれを考えていた。
「何等かの運を自分の手で切拓《きりひら》くまでは、植源や鶴さんや、以前の都《すべ》ての知合にも顔を合したくない」と、お島はそうも思いつめた。
王子の停車場《ステーション》へついたのは、もう晩方であったが、お島は引摺《ひきず》られて行くような暗い心持で、やっぱり父親の迹《あと》へついて行った。静かな町にはもう明《あかり》がついて、山国に居なれた彼女の目には、何を見ても潤いと懐かしみとがあるように感ぜられた。
父親が、温泉場で目っけて根ぐるみ新聞に包んで持って来た石楠花《しゃくなげ》や、土地名物の羊羹《ようかん》などを提げて、家へ入って行ったとき、姉も自分の帰りを待うけてでもいたように、母親と一緒に茶の間にいた。もう三つになったその子供が歩き出しているのが、お島の目についた。
「へえ、暫く見ないまにもうこんなになったの」お島は無造作に挨拶をすますと、自分の傷ついた
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