」は「りっしんべん」に「兄」、第3水準1−84−45、110−8]《そらとぼ》けた顔をして言った。
「それじゃ御父さん恁《こ》うしましょう。私も長いあいだ世話になった家ですから、これから忙《いそが》しくなろうと云うところを見込んで、帰って行くのも義理が悪いから、六月一杯だけいて、遅くともお盆には帰りましょう」
 お島はそうも言って、父親を宥《なだ》め帰そうと努めたが、こんな所に長くいては、どうせ碌なことにはならないからと言張って、やっぱり肯《き》かなかった。田舎へ流れていっている娘について、近所で立っている色々の風聞が、父親の耳へも伝わっていた。
「立つにしたって、浜屋へもちょっと寄らなくちゃならないし、精米所だって顔を出さないで行くわけにいきやしませんよ。私だって髪の一つも結わなくちゃ……」お島は腹立しそうに終《しまい》にそこを立っていったが、父親も到頭職人らしい若い時分の気象を出して、娘の体を牽着《ひきつ》けておく風の悪い田舎の奴等が無法だといって怒りだした。
「お前と己とじゃ話のかたがつかねえ。誰でもいいから、話のわかるものを此処《ここ》へ呼んできねえ」
 父親は高い声をして言出
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