たが、青柳の顔が見えると、どんな時でも彼女の様子がそわそわしずにはいなかった。
 お島の目にも、愛相《あいそ》のいい青柳の人柄は好ましく思えた。彼は青柳から始終お島坊お島坊と呼びなずけられて来た。最近青柳がいつか養父から借りて、新座敷の造営に費《つか》った金高は、少い額ではなかった。

     六

 お島は作との縁談の、まだ持あがらぬずっと前から、よく養母のおとらに連れられて青柳と一緒に、大師さまやお稲荷《いなり》さまへ出かけたものであった。天性《うまれつき》目性の好くないお島は、いつの頃からこの医者に時々かかっていたか、分明《はっきり》覚えてもいないが、そこにいたお花と云う青柳の姪《めい》にあたる娘とも、遊び友達であった。
 おとらは時には、青柳の家で、お島と対《つい》の着物をお花に拵《こしら》えるために、そこへ反物屋を呼んで、柄《がら》の品評《しなさだめ》をしたりしたが、仕立あがった着物を着せられた二人の娘は、近所の人の目には、双児《ふたご》としかみえなかった。おとらは青柳と大師まいりなどするおりには、初めはお島だけしか連れていかなかったものだが、偶《たま》にはお花をも誘い出し
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