ともあったが、大抵は薄暗い自分の部屋に閉籠《とじこも》っていた。
夏らしい暑い日の光が、山間の貧しい町のうえにも照って来た。庭の柿の幹に青蛙《あおがえる》の啼声《なきごえ》がきこえて、銀《しろがね》のような大粒の雨が遽《にわか》に青々とした若葉に降りそそいだりした。午後三時頃の懶《だる》い眠に襲われて、日影の薄い部屋に、うつらうつらしていた頭脳《あたま》が急にせいせいして来て、お島は手摺《てすり》ぎわへ出て、美しい雨脚《あまあし》を眺めていた。圧《お》しつけられていたような心が、跳《はね》あがるように目ざめて来た。
五十七
浜屋の主人が、二度ばかり逢いに来てくれた。
主人は来れば急度《きっと》湯に入って、一晩泊って行くことにしていたが、お終《しまい》に別れてから、物の二日とたたぬうちに、また遣って来た。東京から突如《だしぬけ》に出て来たお島の父親をつれて来たのであった。
お島はその時、貰《もら》い子《ご》の小娘を手かけに負《おぶ》って、裏の山畑をぶらぶらしながら、道端の花を摘《つ》んでやったりしていた。この町でも場末の汚い小家《こいえ》が、二三軒離れたところにあっ
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