した浜屋の前の往来には、よかよか飴《あめ》の太鼓が子供を呼んでいた。
「お暖《あった》かになりやした」
 浜屋の炉端へ来る人の口から、そんな挨拶が聞かれた。
 ちらほら梅の咲きそうな裏庭へ出て、冷い頸元《えりもと》にそばえる軽い風に吹かれていると、お島は荐《しきり》に都の空が恋しく想出された。
「御父さんから、また手紙が来ましたよ」
 人のいないところで、帯の間から手紙を出してお島は男に見せた。
 正月頃までは、ちょいちょい嫁の病気を見にいっていた男は、この頃ではすっかり市《まち》の方へも足を遠|退《の》いていた。湯殿口や前二階で、ひそひそ話《ばなし》をしている二人の姿が、妹達の目にも立つようになって来た。
 そんな処に何時までぐずぐずしていないで、早く立って来い。父親の手紙は、いつも同じようであったが、お島の身のうえについて、立っているらしい碌《ろく》でもない噂《うわさ》が、昔《むか》し気質《かたぎ》の老人《としより》を怒らせている事は、その文言《もんごん》でも受取れた。
「どうしましょう」
 お島はその度《たんび》に、目に涙をためて溜息《ためいき》を吐《つ》いたが、還るとも還らぬと
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