《おちくぼ》んだ目ばかりがぎろりと薄気味わるく光っていた。
その日は、夕方から雪がぼそぼそ降出して来た。綿の入ったものの支度すらできなかったお島は、袷《あわせ》の肌にしみる寒さに顫えながら、汽車の出てしまった寂しい停車場を、浜屋の番傘をさして、独りですごすご出て来た。
「兄さんにすっかりかつがれてしまったんだ!」
お島は初めて気がついたように、自分の陥ちて来た立場を考えた。
達磨《だるま》などの多い、飲食店のなかからは、煮物の煙などが、薄白く寒い風に靡《なび》いていた。
五十三
繭買いや行商人などの姿が、安旅籠《やすはたご》の二階などに見られる、五六月の交《こう》になるまで、旅客の迹《あと》のすっかり絶えてしまうこの町にも、県の官吏の定宿《じょうやど》になっている浜屋だけには、時々洋服姿で入って来る泊客があった。その中には、鉄道の方の役員や、保険会社の勧誘員というような人達もあったが、それも月が一月へ入ると、ぱったり足がたえてしまって、浜屋の人達は、炉端《ろばた》に額を鳩《あつ》めて、飽々する時間を消しかねるような怠屈な日が多かった。
「さあ、こんな事をしちゃいら
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