なが知合をたよって、着のみ着のままで千葉の方へ落ちて行くことになった頃には、壮太郎もすっかり零落《おちぶ》れはてていた。月はもう十二月であった。山はどこを見ても真白で、町には毎日々々じめじめした霙《みぞれ》が降ったり、雪が積ったりしていた。
 東京の自宅《うち》の方へ、時々無心の手紙などを書いていた壮太郎が、何の手応《てごたえ》もないのに気を腐らして、女から送って来た金を旅費にして、これもこの町を立って行ったのは、十二月の月ももう半過《なかばすぎ》であった。旅客の姿の幾《ほと》んど全く絶えてしまった停車場へ、独《ひとり》遺《のこ》されることになったお島は、兄を送っていった。精米所の主人や、浜屋の内儀《かみ》さんなどに、家賃や、時々の小遣などの借のたまっていた壮太郎のために、双方の談合《はなしあい》で、その質《かた》に、お島の体があずけられる事になったのであった。
 寒い冬空を、防寒具の用意すらなかった兄の壮太郎は、古い蝙蝠傘《こうもりがさ》を一本もって、宛然《さながら》兇状持《きょうじょうもち》か何ぞのような身すぼらしい風をして、そこから汽車に乗っていった。鳥打の廂《ひさし》から、落窪
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