は、おかなは兄の思っているほど気楽な身分でもなかった。おかなの話によると、鉱敷課《こうしきか》とやらの方に勤めて、鉱夫達と一緒に穴へ入るのが職務であるその旦那から、月々|配《あてが》われる生活費と小遣とは、幾許《いくら》でもなかった。もと居た市《まち》の方では、誰も知らないもののない壮太郎との情交《なか》が、鉱山《やま》の人達の口から、薄々旦那の耳へも伝わってから、金の受渡しが一層やかましくなって、おかなはその事でどうかすると旦那と豪《えら》い喧嘩を始めることすらあった。夏の頃から、山間の湯に行ってみたり、市《まち》の方の医者へ通っていたりしていたおかなの体は、涼気《すずけ》が経つに従って、いくらか肉づいて来たようであったが、やっぱり色沢《いろつや》が出て来なかった。それに何方《どちら》を向いても、山ばかりのこの寂しい町で、雪の深い長い一冬を越すことは、今まで賑《にぎや》かな市《まち》にいたおかなに取っては、穴へ入るほど心細い仕事であった。どこか暖い方へ出て、もとの商売をしよう! おかなは時々その相談を、壮太郎にも為てみるのであった。
 旦那から少《すこし》ばかりの手切をもらって、おか
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