くようになったと云う旅籠屋などに、働きに入ろうかとさえ思ってみることもあったが、それらのお客が皆《みん》な近在の百姓や、繭買《まゆかい》などの小商人《こあきゅうど》であることを想ってみるだけでも、身顫《みぶるい》が出るほど厭であった。
 裸になって市《まち》から帰って来ると、兄はよくお島のものを持出して、顔を知っている質屋の門などを潜《くぐ》ったが、それも種子《たね》が尽きて来ると、矢張女のところへ強請《せび》りに行くより外なかった。
 その使に、お島も時々遣られた。峠の幾箇《いくつ》もある寂しい山道を、お島は独りでてくてく歩いて行った。どこへ行っても人家があった。休み茶屋や居酒屋もあった。女の囲われている町では、馬蹄《ばてい》や農具を拵《こしら》えている鍛冶屋《かじや》が殊《こと》に多かった。
「おかなさんが、こんな処によくいられたもんだ」お島は不思議に思ったが、それでも女のいるところは、小瀟洒《こざっぱり》した格子造の家であった。家のなかには、東京風の箪笥《たんす》や長火鉢もきちんとしていた。

     五十二

 けれど、そうしてちょいちょい往ってみる、お島の目に映ったところで
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