れない」
朝の拭《ふき》掃除がすんで了《しま》うと、その仲間に加わって、時のたつのを知らずに話に耽《ふけ》っていたお島は、新建《しんだち》の奥座敷で、昨夜《ゆうべ》も悪好《わるず》きな花に夜を更《ふか》していた主婦の、起きて出て来る姿をみると、急いで暖かい炉端を離れた。そして冬中女の手のへらされた勝手元の忙しい働きの隙々《ひまひま》に見るように、主婦から配《あて》がわれている仕事に坐った。仕事は大抵、これからの客に着せる夜着や、※[#「※」は、「糸+弟」、第4水準2−84−31、99−11]袍《どてら》や枕などの縫釈《ぬいとき》であった。前二階の広い客座敷で、それらの仕事に坐っているお島は、気がつまって来ると、独《ひとり》で鼻唄を謡いながら、機械的に針を動かしていたが、遣瀬《やるせ》のない寂しさが、時々|頭脳《あたま》に襲いかかって来た。
窓をあけると、鳶色《とびいろ》に曇った空の果に、山々の峰続きが仄白《ほのじろ》く見られて、その奥の方にあると聞いている、鉱山《やま》の人達の生活が物悲しげに思遣《おもいや》られた。奥座敷の縁側に出してある、大きな籠《かご》に啼《な》いている小禽《
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