京を立つ前から聴《きか》されていた。女がまだ商売をしている頃から、兄はその市《まち》へ来て、何も為《す》ることなしに、宿屋にごろついていたり、居周の温泉場に遊んでいたりしているうちに、土地の遊人仲間にも顔を知られて、おりおり勝負事などに手を出していた。女が今の男に落籍《ひか》されてから、彼は少《すこし》ばかりの資本《もとで》をもらって、※[#「※」は「夕」の下に「寅」、第4水準2−5−29、91−5]縁《つて》のあったこのS――町へ来て、植木に身を入れることになったのであった。
昼頃に雨があがってから、お島は壮太郎に連れられて、つい二三町ほど隔っている大家の家へ遊びに往った。そこはこの町の唯一の精米所でもあり、金持でもあった。大きな門を入ると、水車仕掛の大きな精米所が、直にお島の目についた。話声が聴取れないほど、轟々《ごうごう》いう音がそこから起っていた。[#底本では「。」無し、91−10]
「この米が皆《みん》な鉱山《やま》へ入るんだぜ」
壮太郎は、お島をその入口まで連れていって、言って聴せた。白くなって働いている男達と、壮太郎は暫く無駄話をしていた。
主人は硝子戸《ガラスど》
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