はい》に、雨のなかを再び停車場へ出かけていってから、お島は晩の食事の支度に台所へ出たが、女がおりおり来ると見えて、暫《しばら》く女中のいない男世帯としては、戸棚《とだな》や流元《ながしもと》が綺麗《きれい》に取片着いていた。
 壮太郎は、夜までかかって、車で二度に搬《はこ》び込まれた植木類を、すっかり庭の方へ始末をしてから、お島にはどこへ往くとも告げずに、またふいと羽織や帽子を被《き》て出て往ったが、お島はその晩裏から入って来た壮太郎が、何時頃帰ったかを知らないくらい疲れて熟睡した。
 明朝《あした》目のさめたとき、水車の音が先ずお島の耳に着いた。お島はその音を聞きながら、寝床のなかにうとうとしていたが、今日から全く知らない土地に暮すのだと思うと、今まで憎み怨《うら》んでいた東京の人達さえ懐《なつか》しく思われた。
 ここから二停車場《ふたていしゃば》ほど先にある、或大きな市《まち》へ流れて来て、そこで商売をしていた兄の女が、その頃二三里の山奥にある或鉱山の方に係《かか》っている男に落籍《ひか》されて、市とS――町との間にある鉱山《やま》つづきの小さい町に、囲われていたことは、お島も東
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