した。
 壮太郎の家は、閑静なその裏通にあった。町屋風の格子戸や、土塀《どべい》に囲われた門構の家などが、幾軒か立続《たてつづ》いたはずれに、低い垣根に仕切られた広々した庭が、先ずお島の目を惹《ひ》いた。木組などの繊細《かぼそ》いその家は、まだ木香《きが》のとれないくらいの新建《しんだち》であった。
 留守を頼んで行った大家《おおや》の若い衆《しゅ》と、そこの子供とが、広い家のなかを、我もの顔にごろごろしていた。
「へえ、こんな処でも商売が利くんですかね」
 部屋に落着いたお島は、縁端《えんばな》へ出て、庭を眺めながら呟いた。
「この町は先ずこれだけのものだけれど、居周《いまわり》には、またそれぞれ大きな家があるからね」壮太郎は、茶盆や湯沸をそこへ持出して来ると、羽織をぬいで胡坐《あぐら》を掻《か》きながら呟《つぶや》いた。
 秋雨のような雨がまだじとじと降っていた。水分の多い冷《つめた》い風が、遠く山国に来ていることを思わせた。ごとんごとんと云う慵《だる》い水車の音が、どこからか、物悲しげに聞えていた。

     四十八

 そこにお島を落着かせてから、壮太郎が荷物運搬の采配《さい
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