《しみ》ひろがって来た。
「矢張《やっぱり》こんなような町?」お島は汽車が可也《かなり》大きなある停車場へ乗込んだとき、窓から顔を出して、壮太郎にささやいた。
 停車場には、日光帰りとみえる、紅色《べにいろ》をした西洋人の姿などが見えた。
「とてもこんな大きなんじゃない」壮太郎は、長く沁込んだその町の内部の生活を憶出《おもいだ》していると云う顔をして笑った。その土地では、壮太郎はもう可也色々の人を知っていた。
「どこを見ても山だからね。でも住なれてみると、また面白いこともあるのさ」
 汽車は段々山国へ入っていった。深い谿《たに》や、遠い峡《はざま》が、山国らしい木立の隙間《すきま》や、風にふるえている梢《こずえ》の上から望み見られた。客車のなかは一様に闃寂《ひっそり》していた。

     四十七

 車窓に襲いかかる山気《さんき》が、次第に濃密の度を加えて来るにつれて、汽車はざッざッと云う音を立てて、静に高原地を登っていった。鬱蒼《うっそう》とした其処ここの杉柏《さんぱく》の梢からは、烟霧《えんむ》のような翠嵐《すいらん》が起って、細い雨が明い日光に透《すか》し視《み》られた。思いも
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