て駄目だ。お前ならきっと辛抱ができる」
お島に家へ坐られることが不安であったと同時に、田舎で遣《やり》かけようとしている仕事と、そこで人に囲われている女とから離れることの出来なかった兄の壮太郎は、そう言って話に乗易《のりやす》いお島を唆《そそのか》した。
田舎の植木屋仲間に売るような色々の植木と、西洋草花の種子《たね》などを、どっさり仕込んで、それを汽車に積んで、兄はしばらく住なれたその町の方へ出かけていった。一緒に乗込んだお島の心には、まだ見たことのない田舎の町のさまが色々に想像されたが、これまで何処へ行っても頭を抑えられていたような冷酷な生母、因業《いんごう》な養父母、植源の隠居、それらの人達から離れて暮せるということを考えるだけでも、手足が急に自由になったような安易を感じた。
「みっちり働いて、お金を儲《もう》けて帰ろう」お島はそう思うと、何もかも自分を歓迎するための手をひろげて待っているような気がした。
黝《くろず》んだ土や、蒼々《あおあお》した水や広々した雑木林――関東平野を北へ北へと横《よこぎ》って行く汽車が、山へさしかかるに連れて、お島の心には、旅の哀愁が少しずつ沁
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