でいるんですもの。その癖|嫉妬《やきもち》やきなんですがね」
「でも能く思切って了《しま》ったわね」
「芸者や女郎じゃあるまいし、いつまで、くよくよしていたって為方がないですもの。私はあんなへなへなした男は大嫌いですよ」
「それもそうね。――私も思切って、どこか働きに行きましょうかしら」
「御|笑談《じょうだん》でしょう。そんな可愛い坊ちゃんをおいて、何処へ行けるもんですか」

     四十二

 夜になると、お島はまた隠居の足腰をさすって、寝かしつけてやるのが、毎日の日課であったが、時とすると子息《むすこ》夫婦に対する、病的な嫉妬から起るこの老婦《としより》の兇暴な挙動《ふるまい》をも宥《なだ》めてやらなければならなかった。
 四十代時分には、時々若い遊人《あそびにん》などを近《ちかづ》けたと云う噂のある隠居は、おゆうが嫁に来るまでは、幼《ちいさ》い時から甘やかして育てて来た子息《むすこ》の房吉を、猫可愛《ねこかわゆ》がりに愛した。一度脳を患《わずら》ったりなどしてから、気に引立《ひったち》がなくなって、温順《おとな》しい一方なのが、彼女《かれ》には不憫《ふびん》でならなかった。房
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