れ等を決定する、故に歴史の基礎は物質的であるというのである。
 更にマルクスは「哲學の貧困」にこれを詳説している。曰く「社會關係は密接に生産力と關係している。人類は新しき生産力を獲得することによりてその生産樣式を變化し、その生産樣式、生活資料を獲得する方法を變化することによりて、その一切の社會關係を變化する。風車と共に封建社會が存在し、蒸氣機關と共に資本家社會が生れる。
 物質的生産に一致せる社會關係を樹立した同じ人々は又その社會關係に一致せる、原理、觀念、範疇を生じさせる。
 かくの如く此等の觀念、これ等の範疇は、それによりて表現されている社會關係以上に永遠ではない。これ等は歴史的、一時的の産物なのだ。」

       五

 如何に藝術の永遠を信ずるものも、徳川時代の文學と明治時代の文學とに變化がなかつたと主張する勇氣はないであろう。此の變化は何によつて生じたか? 唯物史觀はそれは物質的變化によつて生じたのであると解釋する、社會の生産關係の變化に基くものだと解釋する、抑《そもそ》も唯物史觀はこの變化或は歴史のみに對する説明であつて、發生や起原を説明しようとはしないのである。況《い
前へ 次へ
全12ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング