予審調書
平林初之輔
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)篠崎《しのざき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一箇所|曖昧《あいまい》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]
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一
「あなたの御心配もよくお察ししますが、わたしの立場も少しは考えて頂かないと困ります。何しろ、規則は規則ですから、予審中に御子息に面会をお許しするわけにもゆきませんし、予審の内容を申し上げることも絶対にできないのですからねえ。こんなことは、私が申し上げるまでもなく十分おわかりになっているでしょうが……」
篠崎《しのざき》予審判事は、裁判官に特有の冷ややかな調子で、ここまで言って、ちょっと言葉をきって、そっぽをむきながら敷島《しきしま》に火をつけた。判事の表情が、今日は常よりも余計に冷ややかに、よそよそしく、まるで敵意を帯びているようにさえ見えるので、客は何となく底気味が悪いらしい。
「それは、もう、よく
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