實である。プロレタリヤの運動としての文藝運動はまずこういう人々の蟲のよい野心に對して答うるところがなければならぬ。プロレタリヤの文藝運動は流行作家の惡口をいう運動でもなければ、新進無名作家を引きたてたり擁護したりする運動でもない。無名と有名、流行と非流行とは問うところでない。それは階級戰である。ブルジョアに對するプロレタリヤの對抗運動である。
 次にプロレタリヤの文藝運動は文藝運動であるよりも先ずプロレタリヤの運動であることを念頭におかねばならぬ。だからその綱領は文藝上の綱領ではなくて、プロレタリヤそのものの綱領でなければならぬ。プロレタリヤの解放――それがプロレタリヤ文藝運動の唯一の綱領である。それ以外のものを求めるのもまたプロレタリヤ文藝運動の陣營を去つて「階級」の「上」に赴くべきだ。文藝の爭いの奧に階級の爭いを認むるもののみ、影法師のうしろに實體を、枝葉の下に根幹を認むるもののみが階級藝術運動の戰士となり得るのである。
 階級鬪爭の決勝戰はただ本隊の衝突によりてのみ決せられる。文藝運動はこのプロレタリヤ大衆の運動と協調聯絡を有しなければ全然無效である。大衆と離れた運動はただ徒勞で
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