あるかも知れない。然しながらそういう人々は階級藝術の意義を遂に理會し得ず、調子に浮かされて吾知らずその運動の中へ飛びこんでいる周章者《あわてもの》に他ならぬのだ。そういう人々は今の内に、けちくさい、あまり見榮えもしない階級戰の隅つこの方に陣どる代りに、「階級」というような窮屈な鎖はかなぐりすてて、藝術そのものの晴れの舞臺へ出づべきだ。
如何なる運動にも不純分子が集る如く、階級藝術の運動にも不純分子が寄つてたかつてそれを利用し、くいもの[#「くいもの」に傍点]にしようとする。階級文藝の旗じるしの下にかくれてこそ泥[#「こそ泥」に傍点]をはたらこうとする者がある。かくてはじめの中は階級藝術の問題は無名作家と流行作家との爭いのように見られていた。實際、社會主義運動の中に、働くことのきらいなごろつき[#「ごろつき」に傍点]や食いたおし[#「食いたおし」に傍点]やがまじりこむと同じように、階級藝術運動の中にも、文藝のいろは[#「いろは」に傍点]もわきまえない連中が、糞眞面目な月給取商賣はいやだからというのであわよくば流行作家になりすまそうというどえらい野心を抱いて飛びこんだもののあつたことは事
前へ
次へ
全6ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平林 初之輔 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング