ェ、寒暑の変化ははげしい。冬は空気が乾燥してをり、夏は湿度が高くて蒸し熱い。日本人の骨格は大体ヨーロツパ人よりも小さく、従つて体力も弱い。日本には火山が多く地震が頻々と起る。四面海にかこまれてをり、内地には山が多い。これ等の自然的条件は、日本の制度、文物、日本民族の気質、性格、思想等に直接間接に何等かの影響を及ぼさずにはおかない。否、これ等の自然条件は、それを舞台として営まれる人間の社会生活そのもの、社会そのものを決定するのである。そこで、吾々は、社会の最も基礎的条件として自然を挙げなければならぬのである。与へられた自然に適応しなければ、社会はつくれないのである。而して、自然条件の差異は、その上にできる社会に差異をもたらすのである。北極に近い氷原に於て農耕民族の社会ができることも不可能だし、アフリカの砂漠の中に工業文明が栄えるといふことも等しく不可能であるが如くである。
この自然的条件が、人間の社会に何等の影響をも及ぼさぬと考へるのは勿論皮相な見解である。今日の科学が、この影響を精密に分析し得るか否かは別として、自然の影響が存在するといふことは、最近の人文地理学や人種学や、土俗学等が
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